介護食の宅配ビジネスで起業?!高齢化社会だからって、大丈夫?

ウェルネスダイニング

近年、日本において国際競争力の底上げ気運から、地方自治体レベルで起業支援が充実してきています。

そして、総務省統計局の調べでは、2022年で65歳以上の高齢者が全人口の29%(約3600万人)を占め、今後より比重が増していくものと思われます。

このため、介護に関するビジネスが成長性においてますます注目。

さらにその中でも、配食事業がどうやら最も開業しやすいぞと囁かれているようで…。

この記事にたどり着いたアナタは、きっと脱サラや定年後の新たな人生を模索しているかと思います。

そして、配達業務だと立地やコスト、作業等を考えて、他の介護事業に比べて安易で手始めにはちょうどいいんじゃないかなと思った…のではと拝察いたします。

そこで、じっくり調べてきました。
結果、簡単言えばその通り安易で始めやすいです。
しかし、どうやら少し才覚が必要のようです。

要介護者向けのお弁当である介護食。

この介護食の宅配サービスが簡単であり、それでいて難しいとされる仕組みや運営を事前に知っておくことで、覚悟しやすくなることでしょう。

それでは、詳しくご紹介いたします。

宅配ビジネスに向く弁当や惣菜

超高齢化社会で介護に対する需要が高まる中、生きていくために欠かすことのできない行為である”食事”に着目して起業を思い立ったアナタに、前提といえる事柄があります。

まず売りたいと思っているモノが、商材として向いているかどうかということです。

つまり、宅配サービスで扱っているお弁当やお惣菜には、大きく分けて二つの完成形態があり、それを知っていないと始めからつまづいてしまうよということなのです。

その二つとは、”冷凍食“と”冷蔵食“のこと(あえて色分けします)。

この二つの特色を知っておくことから、宅配ビジネスが始まります。

冷凍食と冷蔵食

宅食サービスで取り扱う食材の保存状態として冷凍されたものと冷蔵されたものがあります。

調理された食材を急速に冷え固めた冷凍食は、大手配送会社も冷凍配送することで長期間の保存が利くことから、大量の食材を遠くに運んでもらえます。

ちなみに、介護食で冷凍食タイプと言えば、『やわらかダイニング』が代表的なところとして知られています。

それに対して、調理された食材のまま冷ました冷蔵食は、地域の各拠点から配達するため、食物の繊維や細胞を傷つけることなく、食感そのままで召し上がることができます。

介護食で冷蔵食といえば、宅食業界トップの『ワタミの食卓』が有名です。

ここで、冷凍食冷蔵食の代表サービスの口コミ記事をご紹介いたします。

冷凍の宅配食『やわらかダイニング』の口コミ記事
冷蔵の宅配食『ワタミの食卓』の口コミ記事

どちらも基本的な特徴を抑えた内容になっていますので、予備知識としてご一読ください。

冷凍食はビジネスに向かない

さて、遠方の製造工場から直接配送できる冷凍食、ビジネスとしてはこちらの方がかかるコストも抑えられ、より手軽に開業できそうに見えます。

ところが冷凍食だと、中間業者としての立ち回りが全くできません。

つまり惣菜メーカーとしては、仲介が不要なのです。

理由は、大手配送会社が直接各家庭や施設に届けてくれるから。

そこで見方を変えて冷凍食の欠点、都度送料が発生するという特徴を逆手に、セット品を大量に買い付けて、それをバラして届けるというビジネスモデルが考えられます。

しかし、どのメーカーも価格をオープンにしており、ロット価格も対応していないことから、手数料収入という旨味は冷凍食の宅配で言えば全くありません(後述より一部例外あり)。

つまり、冷凍食では稼げません。

その点、冷蔵食は賞味期限が大変短いため、中継拠点としての店舗の存在が不可欠となります。

メーカーも全国に拠点を構えるのは、管理面から負担が大きく、そのため外注業者が必要となってきます。

そこでその外注業者として名乗りを上げ、メーカーと契約、そして起業というチャンスが生まれてくる仕組みです。

つまり、商売するなら冷蔵食一択ということがわかります。

宅配ビジネスに向いた業態

介護食として弁当や惣菜を宅配するという着目点で、いろいろ準備すべきことを探っているかと思いますが、結局どの業態で始めたらいいのかを知っておきたいところです。

簡単に以下の3つ

  • 弁当や惣菜を調理から配送までを一貫
  • 調理メーカー
  • 宅配業者

以上が挙げられると思いますが、間違っても起業段階で調理に手を出してはいけません

メニューから衛生管理から生産規模からスタッフからと考えることが多すぎて、確実に失敗します。

宅配業者として冷蔵食を各家庭に届けること、ここだけに専念してください。

また、近所の持ち帰り弁当屋と提携してやっていく、独自スタイルが思いつくのではないでしょうか。

しかし、ノウハウも何もない起業段階では難易度が高いので、一旦は諦めましょう。

そうなると、残された選択肢は”フランチャイズ“による経営になります。

フランチャイズって、本部が用意した商材を細かく指示されて売り上げあげなきゃいけないんだろ。サラリーマンの時と大差ないじゃん

こう考えたくなるのもわかります。

ただ、考え方を少しだけ変えてください💡

ノウハウや客先からの信用を掴んでから、次のステージに行けばいいのです。

今は食い扶持をどうするかだけを一緒に考えましょう。

開業にかかる諸々のコスト

前項よりフランチャイズでやっていくとして、話を進めます。

開業にかかる資金ですが、フランチャイズ会社のシステムによって大きく異なります。

おおよそ検討する上で300~400万は必要だろうと思ってください。

もちろん、もっと安く開業できる会社もあります。

ただ、それには理由があります。

安い分、サポートもそれなりなのです。

彼らも営利団体です。利益に見合ったサービスしかできません

なので、開業資金が安いからといった理由だけでフランチャイズ契約を結ぶのは、厳に控えましょう

初期投資の主な内訳は、下記の通りです。

  • 物件取得費 20~150万円
  • 内装工事費 10~200万円
  • 設備設置費 30~150万円
  • 車両購入費 0~100万円
  • 広告宣伝費 10~30万円

これに、フランチャイズ会社のシステムによって、研修費(10~20万円)であったり、開業時の仕入(10~15万円)であったりと諸々かかってきます。

そして、開業後も半年内での目標に当たる50食販売を達成したとして、月ごとに50~70万円の経費がかかります。

内訳は簡単に

  • 仕入 30~40万円
  • 店舗賃貸料 7~10万円
  • 車両維持費 5~10万円
  • 広告宣伝費 3~10万円

これに、フランチャイズ会社との契約で毎月かかる費用が加算されます。

500円のお惣菜を毎日配達するとして、@500×50食×30日=75万円とすると、契約の料金を含めて店舗・車両・広告にかける割り振りをどうするかになりますが、おおむね月に50食売り上げて20~25万円ほどの収入が望めます

このことから、立ち上げて半年で軌道に乗せると考えて、開業にかかる資金と月ごとの経費の半年分、おおよそ700万用意できるならば早速始めましょう。

ただし肝心なのは、始めのうちは準備や配送・伝票整理等を自分で動くことによって、人件費を抑えることです。

もし、どうしても工面できない、もしくはとにかく一日でも早く始めたいということであれば、開業してから考えられるリスクを先回りで考えて見積を弾くのもアリです。

開業してから考えられるリスク

  • 周辺地域への認知に時間がかかる
  • 開業にかかる資金が安価なので、参入障壁が低い
  • 資格がいる
  • 借金が必要になる

以上が先に覚悟しておいた方がいいリスクです。

周辺地域への認知に時間がかかる

宅配が主業務なので、店舗の立地はどこでも構いません

ただ、わかりにくいところだと近隣の人さえも知らないため、効率的に広告や宣伝をしないと気づかれないままコストだけがかかってしまいます

その点において、フランチャイズ会社によってはしばらく営業を代行してもらったり、病院や介護施設などとのコネクションがあったりサポートしてくれます

どうせなら、サポートを受けられるうちに、次の仕掛けの打ち方などを根掘り葉掘り聞いてメモしておきましょう。

開業にかかる資金が安価なので、参入障壁が低い

先ほどより、初期投資額が300~400万円(フランチャイズ企業の方針や店舗物件などによっては、10~30万で収まる場合もある)で店舗を持って始められるとなると、ほどなくライバル店が現れるはずです。

認知活動に手間取っていると、ライバル店から目標にされていますので、追い上げが加速度的になります。

とにかく、地元の集まりやイベントに顔を出したり、SNSやホームページ、ブログなどでの発信を行ったりして先行者利益感を周囲に植え付けましょう。

つながりは、後々からてきめんに効いてきます

資格がいる

これは、フランチャイズ本部から言われると思いますが、2つの資格が必須となります。

食品衛生責任者 …これがないとそもそも開業できません。保健所にて受講料1万円程払えば、平日一日の講習で取得できます。

飲食店営業許可 …これを受けてないと、罰せられます。保健所に要領を尋ねて、確実に用意してください。費用は2万ほどです。

どちらもリスクとしては軽く、すぐに対処できるものですが、やってないと重大なことになります。

借金が必要になる

開業として用意した資金が潤沢でなかったり、開業したけど上手く注文が増えなかったりで借金を余儀なくされる機会はきっと出ると思います。

申し込む先は、銀行もしくは日本政策金融公庫などがあります。

銀行は身近なので申し込みやすいですが、経営実績を問われることが多いので、覚悟してください。

日本政策金融公庫は比較的簡単に融資を受けられますが、それでも事業計画書をしっかり作り込んでいないと却下されるので、注意してください。

また、信用金庫信用組合に相談する手もあります。

さらには、地方自治体助成金・補助金も用意しているかと思います。

前もって調べておくだけでも、精神衛生上、心強くなりますよ。

フランチャイズのメリット・デメリット

今までご説明した経緯から、フランチャイズにはメリットとデメリットがあります。

メリット
  • 調理しなくていい、メニュー開発しなくていい
  • スモールスタートが可能
  • フランチャイズ会社の蓄積されたノウハウが経営をスムーズにしてくれる。
  • 超高齢化社会の進行でニーズは間違いなく高い
デメリット
  • フランチャイズ会社によって、システムがバラバラ
  • フランチャイズ会社の本部と相性が合わないと経営がちぐはぐになり、売上に直結してくる
  • 本部やどこかの店舗が不祥事を起こせば、自らの店舗の評判も下がる
  • ちゃんと契約書を読んでいないと、脱退するときの解約手続きで大きく揉める

あと、そもそも起業に向いていない人が、何となくで始めて失敗するケースがあります。

デメリット等を気にする前に、本当に起業に向いているのか、周囲の人からのさりげない自分への評価を冷静に思い返して決断してください

初めて起業する人に勧めるフランチャイズ会社・組織

初めて起業するという方に、最初の段階で検討して欲しいサービスを3つ挙げます。

まごころ弁当(運営会社:株式会社シルバーライフ)

宅配食のフランチャイズ企業の代表格です。

専用ページから「ゼロプラン」を勧められます。

このプランは、フランチャイズの加盟条件が月3万円(税抜き)の会費のみと驚異的です(ただし別途、店舗総合保険の加入が必要にはなります)。

また、売上比のロイヤリティやシステム利用料といった付随費用は一切かかりません

さらに、保証金もかかりません。そのかわりに、事前審査があります

注意するところは、店舗の取得等は自身で済ませておく必要があります

それに、契約期間は5年と長めです。やってみてダメだとわかっても、5年は歯を食いしばって続けないといけません。

先に脱退するときのペナルティー等は事前説明で尋ねる、または契約書を精読するなどで確認できるかと思います。

ただ、開業する前から脱退のことを気にするようでは、本部から消極性を疑われ、信頼関係の構築に余計な時間がかかります。慎重を期してください。

ちなみに、運営会社の株式会社シルバーライフですが、ここはまごころ弁当の他に『配食のふれ愛』、『宅食ライフ』という全く同じサービスの別ブランドを展開しています。

さらには、同社が冷凍食で展開している『まごころケア食』は、土曜日の夜から日曜日の朝にかけて冷凍食を”置き配”にて配送する副業代理店チェーンもやっています(一軒につき800円)。※先の後述箇所

このことから、シルバーライフさんが運営するサービスは、敷居が低い代わりに自社競合をいとわないという自由経済思考が強く、その点でこまめに営業活動を行うなどして、他のブランド店舗に飲み込まれないよう気をつけてください。

ライフデリ(運営会社:株式会社グランフーズ)

元々、まごころ弁当のフランチャイズ店オーナーだった人が独立して立ち上げた会社です。

加盟条件はまごころ弁当と基本的に同じですが、いくつかの点で異なります。

契約期間は3年。

基本的に研修費がかかります(10万円)

ここの一番の特徴は、スーパーバイザー(SV)と呼ばれる店舗管理者を置いていません

SVの能力によって振り回されることもなく、経営に集中できますが、逆にオーナー自身の能力によって売上が変わるので、より経営的センスが問われます。

日本配食サービス協会

一般社団法人で、フランチャイズ会社ではありません

しかし、開業支援や食材調達・経営管理等フランチャイズ会社とほぼ同じことをしています。

違いは営利団体ではないので、契約にかかる費用はどこもフランチャイズ会社より低く抑えられていますが、商品開発力が弱くなっています

また、屋号は自由に決められオリジナルな店舗運営ができますが、エリアの競合についても無頓着なので、近くに同じ協会から支援を受けた店舗が普通に現れます。この点は、シルバーライフさんと状況は一緒です。

さらに、フランチャイズのような名が通ったブランド力がありません

このことから、より地道に、より愚直に地域に根ざした活動をしていかないと、いつまでも売上が伸びないといったことがおきます。

以上、特徴の異なる三社をご紹介いたしました。

どこも一長一短あります。また、これらとはまた異なるシステムをもったフランチャイズ会社もあります。

資料を取り寄せて説明会に参加してみるなりして、精査・検討してもらいたいなと思います。

まとめ

介護ビジネスとしての宅配サービスは、開業する業種でみるととても賢明かと思います。

低予算で始められ、フランチャイズに加盟すれば商品開発しなくてよく、相談などサポートにも応じてもらえる

ただ、フランチャイズ会社のシステムによっては、開業資金が低く始められた分、サポートが不十分であったり、本部との相性が悪く脱退したくてもペナルティが重かったり、近くで競合店舗が増えたり、そもそも事業者としての資質に欠けてたりと全てうまくいくなんてことはなかなかありません。

さらに、あのコンビニ大手『ファミリーマート』が参入を虎視眈々と狙っているようです…。

高齢者宅配弁当はどうですか?|フランチャイズ相談所 vol.425

その点を踏まえて、宅配事業を検討するなら早めに研究したほうがいいと思います。

先ほど冷凍食は起業に向かないと申しましたが、個人的に自動販売機として無人販売したら面白いんじゃないかなと思うんですよ。

やわらかダイニングさん、まとめ買いでグッと単価を下げてくれないかな…。

そういうわけで、この度、僕の知人がフランチャイズオーナーとして店をオープンするようですので、開業祝いに看板を送ろうと思います。

これで少しでも早く人気店になってもらいたいものです🎊

重しとして、水入りのペットボトルが置けます!